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お隣りの国の小説を読んだことはありますか? ②

800対21。この比が示すものは何でしょうか。


大変な格差がある状態だということは、すぐお分かりになると思います。


これは、ちょっと古いデータですが、韓国語の翻訳家舘野晳さんの文章中に見つけた数字です(引用元「をちこち」=国際交流基金のウェブマガジン、掲載日不明)。800というのは韓国での日本文学の翻訳出版の年間点数。21は日本での韓国文学の翻訳出版点数で、2001年から10年間のデータから1年平均を割り出したもの。だいぶ経ってはいますが、あまり状況は変わっていないようです。

彼によれば、ソウルにある大型書店の翻訳書コーナーでも日本文学は別格扱いで、“大きな平台と書棚が用意されており、そこに翻訳書がずらりと並んでいるさまは壮観”だそうです(“”内は上記「をちこち」より。ウエブには写真も掲載)。その品揃えは古典文学に始まり近現代文学の名作、最近売れ筋の人気作家の最新作まで多岐にわたるのだとか。


前号で紹介した「野良猫姫」(ファン・インスク作)のラストにも、何気なく「米原万里のエッセイに出ていた私の好きな詩」が登場し、「えっ、米原万里、と言えばあの米原万里(ロシア語通訳・作家。2006年逝去)だよなぁ…」と驚きました。

日本文学がそんなにも受け入れられている、というのは嬉しい反面、最初の数字を考えると、それでいいのか?と思ってしまうのです。


勿論、KPOP、韓流ドラマは根強い人気ですし、それで十分じゃないか、という人もいるでしょう。でも、KPOPや韓流ドラマに興味ない人にとって、彼の国の人々の内面を知る手段が殆どないわけです。


韓国文学が翻訳出版されない理由はマーケティング上「出版したところで売れないだろう」と推測されるからに他なりません。しかし、鳥が先か卵が先か、という話で、そもそも情報や手に取る機会がないのですから、読もうという人も増えないでしょう。この拙文を読んで興味を持った方は、ぜひ、図書館などで新しい世代の韓国文学の本を探したりリクエストしたりしてみてください。少しずつでも、冒頭にあげた格差が縮まることを願っています。


ここに、前号の冒頭で引用した短編小説集「世界の果て、彼女」(キム・ヨンス著)から再び、「著者の言葉」の文章を載せて締めくくりたいと思います。



“僕は、他者を理解することは可能だ、ということに懐疑的だ。僕たちは多くの場合、他者を誤解している。君の気持ちはよくわかる、などと言ってはならない。(…略…)僕が希望を感じるのは、こうした人間の限界を見つける時だ。僕たちは努力しなければ、互いを理解することはできない。愛とはこういう世界に存在している。従って、誰かを愛するのであれば、努力しなければならない。そして、他者のために努力するという行為そのものが、人生を生きるに値するものにしてくれる。だから、簡単に慰めたりしない代わりに簡単に絶望もしないこと、それが核心だ。”



*絵本の好きな方へ…「天女銭湯」「天女かあさん」(共に、ペク・ヒナ著)が面白いです!



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お隣りの国の小説を読んだことはありますか?  ①


“油絵の具のようにこってりとしたコバルトブルーの光を、空の高みに押し上げるように東の風が吹いてきた。思わず目を閉じてしまうような、五月の澄み渡った夕暮れの風だった。目をうっすら開けて山の下を見ると、夕闇に包まれるソウルの風景、宝石を散りばめたように点々ときらめく灯りの波があり、顔をあげると、まだ青に赤みがかかった広大な光の空間が見えた。…”(「君たちが皆、三十歳になった時」)


 クオンという、あまり耳慣れない出版社から「新しい韓国の文学」というシリーズが刊行されています(2017年10月現在17巻 www.cuon.jp参照)。読書好きの方でも御存知の方は少ないのではないでしょうか。本の情報というと、新聞や雑誌に載る広告であったり、書店に平積みにされていたりすればこそ目につくもの。大手出版社でもなく映画やTVといったほかのメディアとタイアップもしていないとなると、なかなか一般に広まっていくのは難しい世の中です。

 私はひょんなことからこのシリーズを手に取るようになりました。「新しい」という触れ込み通り、1970年前後生まれの作者が多く、本の装丁・表紙のイラストもシンプルで美しく、センスのよさを感じます。

 冒頭の引用は、そのシリーズの1冊、キム・ヨンス著「世界の果て、彼女」という短編集からです。その散文詩のような言葉の連なりに魅了され、まだ韓国に行ったことすらないのに、ここに描かれた風景が私のソウルの原風景のように鮮やかに残りました。
収められた作品は、どれもがこのような抒情的な文章に彩られたものでなく、しかも、必ずしもするすると読めてしまうものばかりでもありません。この文の意図はなんだろうかと頭をひねってしまうこともしばしば…。でも、どこか忘れがたい読後感があります。

 私が読んだ韓国文学は、この出版社以外の物も含め5,6冊に過ぎず、まるで専門家のように語るのもためらいがありますが、「読みやすさ」では「どきどき僕の人生」(キム・エラン著、クオン刊)「野良猫姫」(ファン・インスク著、同じくクオン刊)はお勧めです。両方ともかなり分厚いのですが、めくってみると字も結構大きく(特に前者)、日頃活字に親しんでいる人ならすぐ読めてしまうでしょう。

 また、“知る人ぞ知る”比較的知名度の高い作品に、2014年に創設された第1回日本翻訳大賞の受賞作「カステラ」(パク・ミンギュ著、クレイン刊)があります。パンチの効いた文体、社会の矛盾に鋭く突っ込む内容。そもそも短編のタイトルが可笑しいのです。「ありがとう、さすがタヌキだね」「そうですか?キリンです」「どうしよう、マンボウじゃん」「ダイオウイカの逆襲」…。彼の作品は他にも何冊か翻訳されており、私も読んでみようと思っているところです。

 次号では、何故こうした新しい韓国文学をムックマムブログで紹介しようと思ったのか、その理由に触れたいと思います。


ムックマムスタッフもなか

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