西田卓司
ツルハシブックス劇団員(店主)/茨城大学社会連携センター コーディネーター
第三回 夢がなくても「やってみる」~劇団員として生きる
1 キャリアドリフトというもう一つのキャリア理論
2 「やってみる」を繰り返し「お客」に出会う
3 劇団員として今を生きる
1 キャリアドリフトというもう一つのキャリア理論
夢を持ち、夢に向かって目標を切り分け、そのスモールステップ達成に向けて努力する。
これを「キャリアデザイン」と言います。多くの大学では「キャリアデザイン」という授業を開講していて、大学生はそこで人生を設計します。しかし、実はキャリア理論は1つではありません。世界には10以上のキャリア理論が提唱されています。そのひとつがアメリカ・スタンフォード大学のクランボルツ博士が提唱している「キャリアドリフト」です。日本語で「計画された偶発性理論」と訳されるこの理論は、「よいキャリアは偶然の結果つくられる。だから、偶然が起こるように、人生を生き、偶然をつかめ」と言います。クランボルツ博士は、調査の結果、18歳のときになりたかった職業にいま就いている人は全体の2%に過ぎないことを発表しました。だからあらかじめキャリアを計画するのではなく、偶然をつかむことが大切だと説くのです。おそらくはこのブログを読んでいる方の大部分は共感できるのではないでしょうか。人生は偶然の結果である、と。だから、三日坊主でもいいから、とにかくやってみる、始めてみることが大切なのです。
2 「やってみる」を繰りかえし、「お客」に出会う
「やりたいことがわからない」という学生に対し、「なんでもやってみたらいい」と僕は思うし、多くの大人もそうアドバイスするでしょう。しかし、それは、「13歳のハローワーク」のように、適職に出会うためではありません。「やってみる」といろんな出会いがあります。たくさん感じることがあります。
2002年1月、27歳のとき、僕は勤めていた会社を辞めて、プータローでした。お母さんに連れられてやってきた中学校3年生男子。彼は不登校でした。彼が僕と出会って、だんだんと元気になっていく姿に衝撃を受け、中学生と地域の大人が出会える仕組みが作れないか?と強く思いました。それは9年の時を経て、ツルハシブックス地下にある地下古本コーナーHAKKUTSUになりました。ツルハシブックスを始めて、悩める大学生にたくさん出会いました。その悩みの原因は、中学高校のキャリア教育にあると思い、茨城大学で働きながら学ぶことにしました。「やってみる」とお客に出会い、お客さえ定まれば、お客を幸せにする仕事は世の中にたくさんあるのです。
3 劇団員として今を生きる
ツルハシブックスは全国にいる「劇団員」(月額1,000円の会員制度)が運営する本屋です。劇団員のうちの何人かがチームを組み、「店員サムライ」として店番をします。自分がレジに立っているとき、入り口から入ってくるお客さんを「お客」だと思うか、「共演者」だと思うかによって、対応はまったく変わってきます。その日、その一瞬を演じ切る「劇団員」という生き方をする人が増えていくこと。それを繰り返すことで、お客に出会い、天職だと思える瞬間を数多くつくっていくこと、それがツルハシブックスの目的です。今日もたくさんの共演者たちと一緒に、素敵な舞台を創っていきたいと思います。
「夢を持つこと」が大切なのではありません。「毎日を充実して生きる」方法論の一つとしての夢があるだけです。そしてそれは唯一の方法ではありません。劇団員として今を生きることはそのもうひとつの方法を提示してくれているのではないかと私は思います。長文お読みいただき、ありがとうございました。
劇場のような本屋、本屋のような劇場~ツルハシブックス
ニシダタクジ
http://tsuruhashi.skr.jp/
http://www.facebook.com/tsurubks

イラスト:長尾正大
スポンサーサイト
何かやらなくちゃ!何か見つけなきゃ!と焦っていたのは
なんだったのでしょうか(笑)
明日から楽しく生きられそうです。ありがとうございました。