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「カナヅチ・トリロジー 第一話」

「カナヅチ・トリロジー 第一話」 榎並 摂子


[ささえ愛よろずクリニック ヨーガ・内観指導
]
[内観瞑想会「ここから」主宰

]



ある晴れた日の午後

若い父親は、松林の間を通り抜け

たばこ畑の中を2歳になったばかりの娘を自転車に乗せて走っていた。

そよそよと吹く風は心地良く、夏の匂いを運んで来た。

きっと海は凪いでいて穏やかだろう。

こんな日は、わが娘の人生初めての海体験にはピッタリだと考えていた。

母親が選んだ小さな可愛らしい縞模様の水着を着せられた娘は

裾の方についているフリルが気に入っている様子で

道中、何度もフリルに手を伸ばしては子乗せ用のハンドルから手を離した。

松林の終わりが見えてきて、潮の香りがした。

自転車をとめて、顔を上げると松林の木立の間から海が見えた。

娘はくたびれた様子も見せずに走り出した。

                    おんなのこ


初めての海だ。

ひとしきり浜辺で砂と遊んだ後、父親は娘を抱いて泳ぎ始めた。

若い父親の生まれた町は海がすぐ側にあった。

こどもの頃から友人たちと海で遊び、泳ぎには自信があった。

実際、この日も軽やかに泳ぎ始め、沖の方へ出た。


腕の中の娘は怖がる様子も見せず、海を楽しんでいるようだった。

波間に浮かんで、海と溶け合ったように思えた。

ふと、何かが腕の間をすり抜けていく感覚があった。

「あっ!」
と心の中で叫んだ時にはもう娘は海の底へ向かって沈み始めていた。

ほんの一瞬のできごとであった。

慌てて娘を拾い上げた。

若い父親は、たくみに片足を使い、力強く泳いで岸まで戻った。

岸までの距離が長く感じられた。

ずっとだまっていた娘が、砂の上に身を置かれたとたん泣き出した。

大きな声だった。

父親はその声を聞きながら

数年前に事故で無くした自分の片足を思い出していた。

前はもっとうまく泳げたのに。

この足があったら、きっと、もっとうまく泳げたのに。

帰り道のことはあまりよく覚えていない。

家の近くまで来て、自転車を降りて歩いていたとき
娘が、通りがかった家の前に置かれたバケツの中をのぞき込み
「いやっ」と言って泣き出した。

なかなか泣き止まずに困り果てた。

母親がその声を聞きつけて家から出てきた。

娘は、さっきまで泣いていたことが嘘のように笑った。

若い父親はふと気になって

バケツの中をのぞいてみた。

水の中に蟹がいた。
海の藻と一緒に。


(第二話へ続く)



ムックマムファンの皆様、こんにちは。

榎並摂子(えなみせつこ)と申します。

新潟市を拠点に、生き辛さや弱さを軸に

ヨーガと内観瞑想をお伝えする活動をしています。

第一話、お楽しみいただけたでしょうか?

「カナヅチ・トリロジー」は
わたしの父が実際に体験したことを元に書きました。

「トリロジー」とは「三部作」という意味です。

ポール・オースターが大好きで、20代の頃にたくさん読みました。

今回の題は、特に好きだった

「ニューヨーク・トリロジー」からいただきました。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます♪

次回は更にナゾが深まる〜お楽しみに!

                愛を込めて せつこ☆
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コメント

うわーこの女の子はこれからどうなるの!
私は泳ぎが苦手ですが、海が大好きなので
泳げるようになりたいなあ〜
片足でも自転車に乗り、泳げるって凄い!
続きが楽しみです❗️
2015-09-20 09:41 | かえるちゃん #- | URL [ 編集 ]

ドキドキ😁

不思議なお話…
実話?それともフィクション?
事故が起きる?それとも大丈夫?
ドキドキしながら読みました。
しかもお父さんの片方の足がないということも後になってわかってくるし…
続きが楽しみです。
女の子のイラストも可愛いです😊
2015-09-20 18:19 | ひめりんご #- | URL [ 編集 ]

ドキドキして読みました。
松林や海の情景、そして磯の香りまで届いてきました。
実話と知って、さらにドキドキ。
早く続きが読みたい~~。
小説形式はこれまでになかったので、新鮮でとても嬉しいです!!
2015-09-21 00:21 | ミニー #- | URL [ 編集 ]

かえるちゃん、ひめりんごさん、ミニーさん

コメントありがとうございます。
グログ形式になって、初めて物語風に構成されている
今回のお話。
皆さんに気に入っていただけたようで嬉しいです
次回もお楽しみに!
2015-09-22 21:32 | mukkumamu #- | URL [ 編集 ]

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