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父の認知症 前編

 父の様子がおかしいと思ったのは、5年ほど前のこと、父が75歳の頃だった。
 同じ話を何度もするのはもちろん、身なりを気にしない。表情がない。何をするにも気力が失われていており、これは認知症だなと思ったので、車の運転をやめさせるために受診させたかった。
 母はもちろん、姉も認知症ではないと言って、病院に行かせるなんてかわいそうだとも言った。かわいそう?このまま放置して悪化することの方がかわいそうだよ。事故を起こして誰かをケガさせてからでは遅いよと説得したが、なかなか理解してもらえなかった。
 もちろん父本人も。自分はどこもおかしくないと。

 本人はおろか周囲にも理解してもらえず一年位過ぎたが、症状はどんどん悪化しているように思えたし、気になるエピソードも増え、ようやく周りの人間が受診に賛成してくれるようになった。
 しかし、ここから父を説得するまでにはかなりの労力が必要だった。
 結局、本人をだます形で、脳の検査をし、アルツハイマー型認知症と診断された。そこから、通院を始め、なんとか車を手放すことができた。意外にも車を運転しない母の方が車を手放すことを渋っていた。なぜなら両親の住んでいる町は田舎なので、車での移動で長年暮らして来たため、バスやJRに乗ることの方が難しいと思っており、タクシーを使うという選択肢はゼロだった。自家用車なら重い荷物だって歩いて運ばなくていいし、時間を気にせず用事をたせたから。

 さて、通院が始まって、お酒もやめた父は、購入した自転車で移動するようになった。少し認知症状も進行がゆっくりとなったようにも見えた。
 しかし、自宅で母以外の人と話をしない。近所の人と交流がない状況だと、運動能力も衰え、認知症による気力が奪われていき、過去の辛かった思いや、最近の嫌な出来事ばかりを繰り返し繰り返し母に話すようになっていった。
父の5歳下の母は、幸いにも体も丈夫で、明るい性格だったから、二人の生活も何とか成り立っていたが、母には過度のストレスがかかっていった。

 父は外出は好きだったが、自転車でふらふらと出かけ、帰宅後にどこで何をしたかを答えることができなくなった。よく自宅に戻って来られると不思議なくらいだった。
 通院してから一年ほど経った頃は、物事の決定はできなくなっていたし、こだわりが強くなり、正常な判断はどんどんできなくなっていった。老人会などに出かけて欲しかったが、耳の聞こえもあまりよくなく、たくさんの人の中での会話が困難になったことで、人とのコミュニケーションがますます取れなくなっていくようだった。

 何とか、在宅で母と仲良く暮らしてほしいと思い、母のストレス解消のため、なるべく父と離れる時間を作るようにした。初めは、母だけ連れ出すこともできたが、一人で留守番することが心配になってきて、長時間は難しくなった。父と母を別々に連れ出すことが必要となってきたのだった。

 通院するようになった当初より、医師にも勧められたのが、介護サービスを使っての通所だった。父は当然拒否し、車が迎えに来るなんて恥ずかしいとか、そんな所に何しに行くのか、俺は絶対行かないと怒り出した。これ以上の説得もできず、認知症がゆっくりと進行するようにと祈るばかりであった。


        アルツハイマー型認知症の実父を持つ、ムックマムスタッフ S子
        義父母と夫、息子と暮らす52歳。


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コメント

よくぞ書いてくださいました。誰しも避けては通れない親の高齢化という問題。後編、早く読みたいです。
2016-08-14 21:44 | もなか #- | URL [ 編集 ]

我が家も同じような状況なので、大変興味深く拝見しました。うちは両親とも認知症と思われますが、通院できていません。父は車を運転していて、危険を感じていたのでなんとか返納してもらえないかと案じていましたが、免許の更新で2度目の検査にひっかかり、それを機に返納してもらうことができました。その後、出かけることを嫌がり、毎日家で過ごし、体力も落ち、最近は横になっていることが多くなりました。家に残しておくのが心配で、私も仕事に行くことができず、外出もままなりません。そんなわけで、心配の種ばかりでしたので、おもわずコメントさせていただきました。後編の更新を楽しみにしています。
2016-08-14 22:49 | N子 #xO4123R. | URL [ 編集 ]

もなかさん、N子さん
コメントありがとうございます。
私は親戚はもちろん、近所の人に父の病気のことを
知ってもらいたく、母に周りの人に話して、理解してもらうように話すのですが、そこはまだ母には出来ないようです
体裁を捨てることが父や母のためと考えます。
N子さんも、周りの力を借りましょう。使えるサービスを使って、介護の負担を減らすことが必要です。
2016-08-15 00:19 | スタッフS子 #- | URL [ 編集 ]

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